引き出しの奥に、手紙の束があります。祖母からの葉書、卒業のときの寄せ書き、子どもが描いてくれた絵。読み返すことはまずないのに、捨てようとすると手が止まる。
理由ははっきりしています。捨てたら二度と思い出せないと分かっているからです。物自体が惜しいのではなく、そこに結びついた記憶が消えるのが怖い。だから「いつか整理する」と言いながら、箱ごと引っ越しを繰り返すことになります。
逆に言えば、記憶のほうを別の形で残せれば、実物は手放せます。
「写真を撮っておく」だけでは足りない
いちばん手軽なのはスマホで撮っておく方法ですが、これには弱点があります。あとから探せないことです。
カメラロールには数千枚の写真があり、その中から「祖母からの葉書」を見つけるのは現実的ではありません。日付で探そうにも、受け取った日ではなく撮影した日で並びます。結局「撮ったはずだけど、どこにあるか分からない」状態になり、実物も捨てられないまま残ります。
必要なのは、写真と一緒に探すための手がかりを残すことです。
写真と一節だけを残す
手紙・カードのデジタル保管は、手紙やカードを1通ずつ、次の情報と一緒に記録していくツールです。
- 写真(1通につき複数枚。封筒・便箋・裏面など)
- 差出人・種類(手紙 / 年賀状 / 寄せ書き / 子どもの絵 など)・受け取った日
- 本文の書き起こし(全文でなくていい。心に残った一節だけでも)
- 受け取ったときのこと(「就職が決まらず落ち込んでいた時期に届いた」)
- タグ、お気に入り、実物は処分したかどうか
書き起こしを入れておくと、「祖母」「入学」「ありがとう」といった言葉で検索できるようになります。年ごとにまとまった一覧で表示されるので、「2015年に誰から何をもらったか」を後から辿ることもできます。
「実物は処分した」を記録できる意味
このツールで地味にいちばん効くのが、処分済みのチェックです。
片づけは一度で終わりません。数十通を前にすると、判断に迷って手が止まります。処分したかどうかを記録に残しておけば、「これはもうデジタルにしたから捨てていい」「これは現物を取ってある」が後から分かるので、週末ごとに10通ずつ、という進め方ができます。
全部をデジタル化して全部捨てる必要もありません。「10通のうち、本当に現物で持っておきたいのは1通だけだった」と気づくことのほうが多いはずです。
写真も文章も端末の中だけ
手紙の中身は、他人に読まれたくないものの筆頭です。だからこのツールは、写真も文章もブラウザの中だけに保存します(文字はlocalStorage、写真はIndexedDBという、いずれも端末内の保存領域です)。アップロードは発生せず、サーバーに記録は残りません。
その代わり、次の点に注意してください。
- ブラウザのデータを消すと一緒に消えます(閲覧履歴の削除で「サイトデータ」を消した場合など)
- 別の端末とは同期されません
- 大切な記録は、「CSVで書き出す」で文字情報を保存し、写真は詳細表示から個別に保存しておいてください
制限
- 写真は長辺2000pxのJPEGに縮小して保存します(手書き文字が読める程度を保ちつつ、容量を抑えるため)
- ブラウザが保存できる容量には上限があり、数百枚を超えるような使い方には向きません
- 文字の自動読み取り(OCR)は行いません。書き起こしは手で入れる形です。全文を入れる必要はないので、読み返したときに思い出せる一節だけで十分です